12巻
12巻
B6版 p192
1か月ぶりに顔を合わせた吉家と平良。吉家は大人っぽくなった平良の姿に驚く。平良の誕生日を2人で祝っていると、マンションの管理組合から呼び出しが…。台風の影響で豪雨となり、マンション周辺が水びたしになっていたのだった。緊急事態の対応に追われる中、吉家と平良は何故かかみ合わず、ギクシャクしていた。一方、川に近い真霜の家は、浸水し始めて!?
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集英社マーガレットコミックス 2024年11月発売 桃森ミヨシ
12巻の感想
いよいよこの12巻から「タワマンにおける災害」が話に入ってきます。
それは、窮地に立たされた時、それぞれの本当の望みが浮き彫りになるということでもあり、それぞれの人生や結婚の話へと繋がっていくのですが、12巻はその前哨戦といったところですね。
平良さんの誕生日を祝うきっか。今まで色々と高いものをプレゼントしてきた平良さん。それに返せるよう、少しでも彼が満足できるようにと、きっかもプレゼントを用意。
彼が喜ぶような手作りの料理に加え、なんと10万円の浴衣!
といっても、アーティストの平良さん。選ぶ生地にはこだわりがあることを見込んで、予算として10万円までで好きな反物を選んでもらった上で、きっか自身が浴衣を縫い、一緒に夏祭りへ行く、までがセットのプレゼントと考えていました。
これ、なかなか素敵な計らいですよね〜。
自分の技術やできること+最大限のお金
なんですから。
気持ちだけあげる、とかじゃないんですよ。彼が望むことを考え、労力を使い(料理もして部屋の飾り付けまで!)お金も使う。かなりいい女だな、って思うと同時に、厄介でもあります。
「100万円超えの自分の好きな生地を選ぶから、縫ってくれるだけでも嬉しいよ。」という気持ちの平良さんに対し、
お金も払うこと込みでプレゼントだと考えるきっか。
やっぱり平良さんはどこまで行っても「与える」側の意識で、
彼女はどこか「受け身」とか「もらう」という立場に素直になれない。その理由はあとではっきりするんだけど、今の時点ではきっかが「頑固」だという印象を受けます。
ただ、その「してもらうより自分がしたい」ひいては「自分が主導権を取りたい」とも言えるマインドは、とっても自営業や経営者に向いているんですよね〜。
冠水する街。どんどん水に沈んでいくにつれ、平良さんときっかの関係もギクシャクしてきます。
そしていよいよ、完全にタワマンが「被災地」となってしまった時
ここから別の場所へ一緒に逃げようという平良さん。
とどまりたいというきっか。
完全に決裂します。
作者の後書きで「12巻と13巻が一番辛い展開だ」と書かれていた通りこの12巻はなかなかハードな内容。そして13巻もなんですが、13巻の後半からは真霜推しとしてはニヤニヤ展開なので、私的には辛いのは13巻の途中までって感じです。
そしてこの巻が折り返し地点だっておっしゃってます。
桃森先生の作品で最長になるとは思ってたし、20巻はいくだろうなーと予想してたんですけど、12巻で折り返しということは25巻くらいですかね、思った以上に長い話です。
でも、細かくしっかり伏線を回収していってるところを見ると、めちゃくちゃ最初から話を構成立てていたんだなあと感心します。
状況とリンクするように、みんなの心にも嵐がきている。ざわついている。うまくいかなくなっている。
そして、状況の変化が起きた時、自分の生き方にも変化が訪れる。
この12巻カバーの構図は、3人の状況を表しています。
雨の中、濡れないように傘を後ろから差しかけてる真霜くん。走って追いつこうとしてる。真霜くんはいつも吉家のことしか見てない、人知れず後ろから助けて力を貸すけど、目を合わせないから自分の本心を知ってもらえない。
きっかは差し掛けられている傘に気づかないまま、雨があがったと思って天を仰ぎ喜んでる。真霜くんのちょっと前を歩いてるきっか。雨がやみ晴れてる状況(仕事がうまくいき始めて夢中)が楽しくて仕方ない。
ひららさんは外車に乗って、きっかよりも前の位置から「乗ってかない?」みたいに誘ってる。自分が濡れることなく、経済力で彼女のことも濡れさせない。
わたしは第1回の始まりを読んだ時から、きっかの相手はましもくんだと思ってます。
でも、平良さんとも丁寧に関係を進めているのを読んできて
今はどっちとの可能性も同じくらいあると感じてる。
12巻までは、平良さんとの関係構築 & うまくいかないましもくんだった。
でもこれからの12冊(以上)は逆に、真霜くんとの関係構築 & 平良さんの独り立ち
なのかもしれない。
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