13巻

13巻

B6版 p192

豪雨の影響で吉家と平良の住むマンションは未だ電気すら止まったまま。逃げ出したい平良、留まる決心をする吉家。2人の間にあった「一緒にいることの意味」がどんどんすれ違っていく。一方、真霜の家も浸水被害を受けていた。家の復旧作業に追われるが、吉家との結婚という夢が破れた今、真霜は生きる意味を失いかけていた。吉家が助けに向かっていることを知らずに。

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集英社マーガレットコミックス 2025年3月発売 桃森ミヨシ


13巻の感想

表紙はブルーで沈んだ印象の表情の3人。物語内でも街が冠水し、水の中で絶望の淵に立たされる様子も合わせて表現しているかのよう。

作者の桃森先生も「12巻と13巻が一番辛い巻になる」とおっしゃっていた通り、12巻から始まった災害に引き続き13巻の前半でも次々に襲われる非常の事態に対応を追われ、とうとう平良と紬は離れ離れになります。

おそらく、12巻、13巻は3人とも「底」にいます。


・・・しかし!


ここが分岐点になるんじゃないかなっていうくらい、後半からの展開は希望に向かっていくだけのターンに入ったのでは?


というのも、

ここから真霜がどんどん

かっこよくなる〜〜〜〜!!!!!!


もうね、この一言に尽きます!!!!


後半で、もう将来に夢なんて見ない廃人のようになっていた真霜のもとに紬がかけつけ、彼はどんどん復活していきます。

しかしそこには「自分に振り向いてほしいから動く」という打算的なものはない。

そして、毎日片付けの手伝いにきてくれる紬。つまり好きな子に毎日会えるという事から、真霜のルックスさえどんどんかっこよくなっていくのがまたニクイ。

まあこれは13巻の続きからすごい勢いでビジュアルも変化していくんだけど、

13巻はまずその前哨戦として、


紬の前で真霜が素直になれる。

ということが重要ポイントになっています。泣いて、それでも強がって、意地を張る。

弱いけどしっかりしているように見せたい。

その本当の気持ちが紬にちゃんと伝わっているところがミソなんです。

この素晴らしい場面は、「隣の微熱」で一方的に紬が「約束」したことの伏線回収でもあるんですね。正直、紬と真霜に結ばれてほしい私としてはここから現在の雑誌掲載分までワクワクが止まらない。


そして同時に、平良さんがどう気持ちに折り合いをつけるかも見どころ。

もちろん、紆余曲折あった先で紬と平良さんが結ばれる結果もありえるけど、いずれにせよ今が底で、ここから上がるだけの状態になってきている。



13巻1冊としては、3本入っているそれぞれが


30話 平良視点

31話 真霜視点

32話 きっか視点


で、災害にあってどう気持ちが変わったかがよくわかり、比較もしやすい1冊にまとまっています。

紬は「一人でも生きていけるように」仕事で稼ぐことを決意し、起業を考える。

真霜はまだ自分の生き方に迷いがあるが、自分の原動力は紬だということを再確認し、思いは断ち切らない。

平良は今回こそ本気で結婚を決意する。その理由は、「結婚とは(相手を縛るための)権力」だから。



ある意味もっとも現実的なのは紬で、今の20代の女性の「結婚がゴールではない」「安泰を約束するものではない」っていう意識をよく表してます。

平良さんは理想の高年収男性だけど、結婚して幸せになれるかっていったらグレーな部分は大きい。

そして紬も自己実現の人で、やりたい事を妨げられたくないし、そこまで子供を欲しいとも思っていない。

真霜こそが最も古いタイプの「家庭がほしい」という思考なんだけど、それは男性的なものではなく、むしろ女性的な感じで、そこもまた面白い。

紬が大黒柱になって、真霜が子供を産めたら一番幸せなんだろうな〜〜笑



この31話と32話を読んで、やっぱり真霜と紬がくっつく流れに見えるけど、紬に妊娠してもいいという気持ちにさせるのは、真霜くんなかなか大変そうだぞ。そうすると真霜の夢はどうなるのか問題もでてくる。

ただ、平良さんがかなり譲歩をしてくれたら(平良さんの理想の家庭像を諦めてくれたら)

紬にとって平良さんとの結婚生活は、おたがい仕事をがんばるDINKSとしてまさにパラダイスになるのでは、とも思う。

ただ、子供もいない、仕事でも共有できるものがない、となると、恋愛の炎が沈静化してきた頃に二人の仲が保てるのかどうか。


30話の平良さんと紬の会話、32話の真霜と紬の会話

これらを比べたら、紬がより自然な姿でいられるのは真霜といる時じゃないかなと思う。

真霜との会話は軽快で明るく、かつ踏み込んだところまで話せている。カップル、いや夫婦としても理想的。

これは、紬と平良さんも11巻プールでできたことではあるけど、紬のナイスバディとアイデアとイベント感で成し遂げたことであって、平良さんの方から歩み寄ったわけではない。

それが真霜とは、お互いに踏み込み、歩み寄れている。

食生活においても、同じ「おいしい」は真霜との方がすごく楽しそう。

ふたりは現代社会における役割分担という楔から解放されたとき、とてもしっくりくるカップルになれるはず。

でもいかんせん、真霜の能力が高いからこそ、それを手放すのがもったいないと紬は考え、

真霜自身も自分の能力の高さには自覚がある。

そんな無理をしている真霜を解放してあげられるのもまた、経済力をもった紬ではなかろうか。


フラットな紬が、真霜に対しては「しっかりしてよ、男でしょ!」と思ってしまったこともまた面白い。

これって、無意識に性差を前提とした関係を構築したい深層心理なのでは?

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